こんにちは、春日井コワーキングスペースRoom8オーナーの鶴田です!
最近は、名古屋・春日井を中心に「AIを活用した業務効率化」のご相談をいただく機会が増え、いつの間にか”AIコンサルタント”的な仕事もするようになりました。ChatGPTやGeminiを使って「こんな面倒な作業、自動化できないかな?」という悩みを解決するお手伝いをしています。
今日から「Room8 DXプロジェクト」と題して、僕たちRoom8がどのようにデジタル技術を活用して業務を効率化してきたかをシリーズでご紹介していきます。コワーキングスペースの運営には意外と多くの事務作業があり、それらを一つずつ自動化していった過程や具体的な方法をお伝えします。
第1回目となる今回は、会員様の請求業務を自動化するプロセスの全体像についてお話しします。コワーキングスペースでは毎月の請求書発行や入金確認など、地味ですが欠かせない作業が多くあります。それらをどのように自動化したのか、具体的な仕組みをご紹介します。
請求業務自動化の背景:手作業の限界

コワーキングスペースを始めた当初、会員数も少なかったので「請求書作成くらい手動でやればいいか」と思っていました。でも、皆さんご存知の通り、手作業には限界があります。
以前の請求フロー(手動版)
最初は以下のような流れで会員登録と請求を行っていました:
- お客様がRoom8の入会フォーム(Googleフォーム)に入力
- 僕が手動でデータを確認して契約書を作成
- 支払い方法に応じて手動で処理:
- クレジットカード決済の場合:Stripeで入会金請求とサブスク設定
- 銀行振込の場合:Misocaで請求書を作成・送付
- 入金確認を手動で行う
- freeeに取引データを手入力
これが1人2人なら良いのですが、会員数が増えてくると大変です。しかも月末月初は特に作業が集中。「あれ?この人の請求書送ったっけ?」「この入金はどのお客様だっけ?」みたいなミスも発生しがち。
自動化の必要性
実は、コワーキングスペースという業態は毎月何十人も入会するわけではないので、請求業務自体はそこまで膨大な作業量ではありません。でも、問題は別のところにありました。
「あの人の請求書、送ったっけ?」「今月の請求書、まだ作ってないよね?」といった”気になる”状態が続くと、知らず知らずのうちに脳のリソースを消費しているんですよね。作業量以上に精神的負担になります。
それに、他の業務で忙しいときに「あ!請求書送るの忘れてた!」というのは、プロフェッショナルとして避けたいミス。うっかり忘れることもあるし、定期的にチェックする習慣をつけるのも一苦労です。
僕は普段から「時間は有限だから、自動化できることは自動化しよう」とブログやXで言っているのに、自分の業務が自動化できていないのはある意味「ブランディング崩壊」です(笑)。
そこで、「コーディングできる経営者」という特性を活かして、請求業務の全自動化に取り組むことにしました。この記事では、その仕組みを紹介します。
請求自動化プロセスの全体図
では、実際に構築した請求自動化システムの全体像をご紹介します。この仕組みの特徴は、複雑な判断ロジックをAIに任せることで、プログラム自体をシンプルに保っている点です。
自動化後の請求フロー
![Room8請求自動化プロセス全体図]
※上の図は実際のシステム構成を表したものです。複雑そうに見えますが、AIが判断部分を担っているおかげで、実際のコードはかなりシンプルになっています。
1. 入会申込みとAIによる判断処理
会員様がGoogleフォームから入会申込みを行うと、まずGoogle Apps Script (GAS)がフォームの送信をトリガーとして起動し、データをGoogle Cloud Runへ転送します。Cloud Run上では、AIを活用した処理が始まります。ここで重要なのは、複雑な判断ロジックをAIに任せている点です。
例えば:
- 支払い方法の判別(クレジットカードか銀行振込か)
- 選択されたプランに応じたサブスクリプション設定の決定
- 特別なケース(法人契約、複数席契約など)の処理方法
- 各種割引の適用判断(期間限定キャンペーン、紹介割引、長期契約割引など)
これらの判断をプログラムで記述しようとすると、if文の嵐になりがちです。しかもプランや料金、キャンペーン内容が変わるたびにコードを修正する必要があります。でも、AIに任せることで、「この申込内容ならどう処理すべき?」と自然言語で聞くだけでOK。メンテナンスも楽になります。
AIの判断結果に基づいて、次のように処理が分岐します:
クレジットカード決済の場合:
- Stripe APIを通じて入会金の請求とサブスクリプション設定を自動的に行います
- 入会承認メールを自動送信
- 契約書生成
銀行振込の場合:
- Misoca APIを使って 初回請求書(入会金+翌月分会費) を自動作成・送付
- 「当月分は無料、お支払い確認後ご利用可能、翌々月分の請求書は翌月1日に自動送信される」旨の案内メールを送信
- 契約書生成と送付
2. 月次請求の自動化
銀行振込を選択された会員様に対しては、Misocaの定期送付機能を活用し、毎月1日に翌月分の請求書を自動送信しています。これにより、毎月の請求書作成・送信作業が完全に自動化されました。
ここでも、例外的なケース(途中解約、プラン変更など)の判断をAIが行うことで、複雑なロジックをシンプルに保っています。
3. 入金確認と会計処理の自動化
入金確認と会計処理も自動化しています:
- 銀行入金:freeeの銀行明細自動取込機能で入金を確認・自動仕訳
- Stripe決済:独自に開発したAPIを使って、Stripeからfreeeへのデータ連携を自動化
特にStripeからfreeeへのデータ連携は標準機能では提供されていないため、自前でAPI連携を実装する必要がありました。これにより、「この入金はどの会員さんのものだろう?」という確認作業が不要になりました。
AIの活用方法
このシステムでは、処理の複雑さに応じて2種類のAI APIを使い分けています:
- Google Gemini API:支払方法の判別や単純な判断処理
- OpenAI GPT API:複雑な料金プラン選定や例外処理の判断
AIを使うことの最大のメリットは、ロジックの変更が容易になることです。例えば「今月からこのプランの料金が変わったよ」という場合、通常なら複数箇所のコード修正が必要ですが、AIを使った仕組みなら、AIに対する指示を変えるだけでOK。システム全体のメンテナンス性が格段に向上します。
AIがどう具体的に活用されているかについては、別の記事[「Room8のDXプロジェクト:AIの活用事例」]で詳しく紹介する予定です。
自動化システムのコストパフォーマンス

請求自動化システムについて説明してきましたが、「それって導入コストがかかりすぎるんじゃない?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。ここでは、このシステムの構築・運用コストと、AI活用のメリットについてお話しします。
従来の開発手法と費用
こういった請求自動化システムを従来の方法で開発しようとすると、かなりの費用がかかります。
- 初期開発費: 50万〜100万円以上
- 月額保守費: 3万〜5万円程度
- 機能追加・変更: 都度見積もり
これほど高額になってしまうのは、要件定義からシステム設計、開発、テストまで全工程を人間が地道に行う必要があるからです。特にロジックの変更が多い業務では、修正のたびにコストがかさみます。
AIを活用したアプローチ
一方で、今回ご紹介したようなAIを活用したアプローチなら、驚くほど低コストで同等のシステムを実現できます。
- 初期構築: 数千円〜数万円程度(AI APIの使用料と自分の時間)
- 月額運用費: 数百円〜千円程度(Cloud Run + AI API使用料)
- 機能追加・変更: 最小限のコスト(AIへの指示を変更するだけ)
僕自身、このシステムを構築する過程で、「これは多くのビジネスにも応用できるな」と感じました。そこで、Room8の会員さんにもノウハウをシェアしたところ、「自分たちのビジネスにも取り入れたい」という声をいただくようになりました。
それがきっかけで、無料ブログで概要を紹介したり、詳細手順をnoteで公開したり、必要に応じて実装サポートをするようになったのです。
AIを活用する本当のメリット
コスト面以上に重要なのが、AIを活用することでシステムのメンテナンス性が大幅に向上するという点です。
通常のプログラミングでは、料金体系が変わるたびにコードを修正する必要があります。しかし、AIを判断層として活用すれば、AIへの指示を変更するだけで対応できるケースが多いのです。
例えば、「4月から学生プランを20%オフにする」という変更があった場合:
- 従来のシステム: プログラムのロジック部分を修正→テスト→デプロイ
- AI活用システム: AIへの指示文を更新するだけ
ビジネスの変化に柔軟に対応できる点が、AIを活用した自動化の真の価値だと言えるでしょう。
まとめ:AIを活用した自動化のススメ
今回は「Room8 DXプロジェクト」第1回として、請求業務の自動化プロセスについてご紹介しました。
コワーキングスペースの運営では、会員管理や請求書発行といった地味だけど重要な業務がたくさんあります。これらの作業は一つ一つは大したことがなくても、積み重なると大きな時間と労力を消費します。しかも「あの会員さんの請求書、出したっけ?」といった心理的負担も無視できません。
そこで僕が実践しているのが、「AIを活用した業務自動化」です。今回ご紹介したシステムの特徴は:
- 複雑な判断をAIに任せている: 支払い方法や料金プランの判別、特殊なケースの処理などをAIが判断
- Google Cloud Runで自動処理: クラウド上で安定して動作する自動化システム
- 外部サービスとの連携: Stripe, Misoca, freeeなどのサービスをAPIで連携
- 低コストで高い柔軟性: AIの活用により、システム変更が容易で運用コストも低い
この自動化により、請求業務にかける時間はほぼゼロになり、本来集中すべきコミュニティづくりや会員サポートに時間を使えるようになりました。
皆さんのビジネスでも、「時間を食っている割に価値を生み出していない業務」はないでしょうか?そういった業務こそ、AIを活用して自動化する絶好の対象です。
特にAIが進化した今、従来なら複雑なプログラミングが必要だった判断ロジックも、自然言語で指示するだけで実現できるようになりました。プログラミングの知識がそれほどなくても、AIの力を借りれば驚くほど高度な自動化が可能です。
次回の「Room8 DXプロジェクト」では、「AIを活用した契約書自動生成システム」についてご紹介する予定です。請求業務と並んで面倒な契約書作成を、どのように効率化したのか?ご期待ください!
もし今回の内容に興味を持たれた方は、詳細な実装方法をnoteで公開していますので、ぜひチェックしてみてください。また、ご質問やご相談があれば、お気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!